枝に実った鳥飼なす。

Torikai Nasu

鳥飼なすThe eggplant that carries this town's name

かつて六十軒。やがて、一軒。 A traditional vegetable of Naniwa

ソフトボールほどの大きさの、まるいなす。大阪府が定める「なにわの伝統野菜」のひとつで、名前のとおり摂津市鳥飼が原産地です。皮にはナスニンやクロロゲン酸が含まれ、自然な甘みがあって、炒めても煮ても崩れにくい。定番は田楽です。

枝から下がる鳥飼なす。 ふたつ並んで実る鳥飼なす。 高架を背にして実る鳥飼なす。 鳥飼なすを使った料理の一皿。

大阪の市場が、待っていた頃。

大正から昭和にかけて、鳥飼のなすは市内に六十軒前後の作り手を抱えていました。大阪市内の市場へ運ばれ、評判をとった野菜です。夏になれば、この地区の畑はほとんどがなす畑でした。

手がかかりすぎる、という理由。

水を多く欲しがり、連作ができない。実が重く、枝が垂れて葉に擦れるだけで艶に傷がつく。だから夏のあいだは毎日、株ごとに枝を吊り、周りの脇芽と葉を落として回ることになります。一晩で大きくなる野菜なので、一日空ければその分だけ品質が落ちる。作り手が増えなかった理由は、味ではなく、この手間にありました。

昭和四十年代以降、市内の生産農家は一軒だけになりました。

産地の名前を、産地で守る。

いま、市の農業振興会とともに栽培が続けられ、作り手は少しずつ増えています。小学三年生への植え付け指導、幼稚園・保育所・市民農園への苗の配布。食べたことのある子どもを増やすことが、いちばん遠回りで、いちばん確実な保存だと考えています。

高架の下に畑があり、その向こうにマンションが建つ。それでもここは、鳥飼なすの原産地です。

料理人の手に渡ってから。

定番は田楽。けれど近ごろは、市内の料理人が思いもよらない一皿に仕立ててくれます。厨房まで直接仕入れに来る方もいます。産地を名乗れる野菜は、食べる場所があってはじめて産地でいられる——そう教わりました。

高架を背にして実る鳥飼なす。

In summer

吊って、落として、光を入れる。 What the work actually looks like

収穫期の実は五百グラム前後になります。重いので、枝を吊っておかないと自分の重さで折れる。葉が茂りすぎると光が当たらず、色が薄くなる。だから一本ずつ枝を落として、中まで光を通してやります。

剪定と収穫と着色の確認。この三つに、夏の時間のほとんどを使います。炎天下で株のあいだをまわり続ける作業で、正直、楽な仕事ではありません。それでも艶のある一個が採れたときの手ざわりは、他の野菜では代わりになりません。

Facts

鳥飼なすのことIn brief

分類
なにわの伝統野菜
(丸なす)
大きさ
ソフトボール大
収穫時 400〜500g前後
6月〜7月
秋なすは9月頃
味わい
自然な甘み。
田楽・炒め物・煮物に
栽培の難点
多くの水と手間。
連作ができない
皮の成分
ナスニン
クロロゲン酸
作付
約500m²
(当社)
買えるところ
セッツマルシェ
市内の飲食店ほか

Torikai-Nasu One

町じゅうの厨房が、同じなすを使う二週間。 A summer event across the town

毎年夏、摂津市商工会が主催する「鳥飼なすワン」という企画があります。市内の飲食店や食品製造会社がそれぞれ鳥飼なすを使った一品をつくり、食べた人が店をまわって楽しむ催しです。二〇二六年は七月十六日から三十日まで、二十五の店が参加しました(主催:摂津市商工会/協賛:摂津市・JA北大阪)。

私たちは、そこに並ぶなすをつくる側として関わっています。一軒の農家では数が足りないので、複数の生産者で分担して出荷します。産地の名前がついた野菜が、産地の店で一斉に出る。これ以上わかりやすい地産地消はありません。

開催内容は年によって変わります。最新の情報は摂津市商工会の告知をご確認ください。