一面の稲の向こうに工場と送電鉄塔が並ぶ、摂津市鳥飼八町の地平。

Agriculture in Settsu

摂津市の農業Farming in Settsu, Osaka

十五平方キロに満たない市に、田畑が残っている。 A small city that still farms

摂津市は大阪府の北部、淀川と安威川にはさまれた市です。面積は14.87平方キロメートル。大阪府内でも小さい部類に入り、市域のほとんどが住宅と工場と物流倉庫で埋まっています。それでも、この市にはいまも米と野菜をつくる農家がいます。

以下は、その摂津市の農業がいまどうなっているのかを、市内で実際に農業を営んでいる法人としてまとめたものです。統計だけでは見えない部分——なぜここに農地が残ったのか、誰が耕しているのか、これから始めたい人はどこから入ればいいのか——も含めて書いています。

執筆・更新:株式会社アグリズム摂津(摂津市鳥飼八町)。数字の出典はページ末尾に記載しています。

By the numbers

農地が残った理由は、線引きにあります。 Why farmland survived here

摂津市の農業を理解するいちばんの近道は、都市計画の区域区分を見ることです。市はこう線を引きました——市街化調整区域は、鳥飼八町と淀川だけ。

市の面積
14.87km²
令和7年4月1日現在/国土地理院
都市計画区域
1,487ha
全市域が都市計画区域
市街化区域
1,349ha
鳥飼八町と淀川を除く全域
市街化調整区域
138ha
鳥飼八町、淀川

市街化調整区域とは、市街化を抑制する区域のことです。原則として建物を建てられません。摂津市の場合、その区域は138ヘクタール——市域の一割にも届かず、しかもその内訳は鳥飼八町と淀川です。つまり、川を除けば、この市で「農地が農地のまま守られている場所」はほぼ鳥飼八町に限られます。

ふつう、市街化調整区域は不便な土地の代名詞として語られます。けれど摂津市においては、この線引きこそが、大阪市内から三十分の場所にまとまった田畑を残しました。制約が、そのまま希少性になっている。私たちがこの土地で農業を続ける理由も、突き詰めればここにあります。

もうひとつ、市街化区域のなかにも農地はあります。生産緑地の指定を受けた農地です。宅地並みの課税を避けるかわりに、営農を続けることを約束した土地。住宅街のあいだに畑がぽつりと残っているのは、たいていこの制度によるものです。

What is grown

摂津市で作られているものRice, one famous eggplant, and the seasons

面積でいえば、摂津市の農地の主役は水田です。ヒノヒカリを中心に、もち米や古代米。兼業で続けている家が多く、田植えと稲刈りの時期だけ人が一斉に出てきます。

鳥飼なす

この市の名前を全国に知らせている野菜です。大阪府が認証するなにわの伝統野菜のひとつで、原産地は摂津市鳥飼。ソフトボールほどの丸なすで、まぼろしの野菜とも呼ばれます。

季節の野菜

トマト、きゅうり、キャベツ、大根、玉ねぎ、さつまいも、クレソン。市内で消費されるぶんを、市内でつくる。品目が多いのは、都市に近い農業の典型的な姿です。

WE米®

JA北大阪大阪公立大学の共同研究から生まれた機能性米。粉にして小麦と合わせたパンが、摂津市内の小中学校の給食に使われています。

鳥飼なすについては、産地の生産者として一ページを割いています。歴史も、栽培の難しさも、旬も、買える場所も、鳥飼なすのページにまとめました。食べ方を探している方は食べ方とレシピのほうへどうぞ。

A year in the fields

摂津の畑の、一年。 What the fields look like, month by month

市内を歩いていて「いま畑で何が起きているのか」を知りたい方のために、私たちの田畑を例に一年を並べておきます。

3〜4月
レンゲが咲く
秋に蒔いた緑肥。田が一面ピンクになる
5〜6月
田植え/なすの定植
レンゲを鋤き込み、水を入れる
6〜7月
鳥飼なすの最盛期
毎日の剪定と収穫。夏のいちばん忙しい時期
7月下旬
鳥飼なすワン
市内の飲食店が一斉になすを出す催し
9月
秋なす
夏を越した株から、もう一度
9〜10月
稲刈り
籾殻が大量に出る。堆肥にして土へ返す
10〜11月
レンゲを蒔く
来年の土づくりが、ここから始まる
大根・キャベツ・玉ねぎ
田は休ませ、畑が主役になる

時期は年により前後します。私たちの田畑での目安です。

一面に育った稲。地平線に工場と送電鉄塔が並ぶ、摂津市鳥飼八町の夏。

Who farms here

専業では、なかなか成り立たない。 Mostly part-time, and that is the honest picture

摂津市の農業を担っているのは、多くが兼業農家です。きれいごとを言わずに書くと、この地域で米だけを専業として成り立たせるには、二十万平方メートルほどの田が要ります。市街化調整区域が138ヘクタールしかない市で、それだけの面積を一人が集めるのは現実的ではありません。

そのうえ、機械を持ち、動かせる人が減り続けています。トラクターやコンバインは一台で数百万円。使う日数は年に数えるほど。だから私たちはJA北大阪から農作業を受託し、耕うんや田植えを請け負っています。機械を持っていること自体が、この地域では役目になります。

自分の田だけを見ていると、まわりの畑から順に手が離れていく。摂津市の農業が抱えている課題を一言でいえば、面積でも収量でもなく、次に耕す人がいるかどうかです。

Institutions

摂津市の農業を支えているものThe organisations and schemes behind it

農地は、農家だけで守られているわけではありません。摂津市で農業に関わろうとすると、だいたい次のどこかに行き当たります。

  • 摂津市農業委員会 農地の売買・貸借(農地法第3条)の許可、相続の届出、農地利用の最適化を担う行政委員会。当社代表の渡邊勝彦が会長を務めています。
  • 摂津市農業振興会 摂津市から鳥飼なす保存事業の委託を受け、栽培を担っている組織。市内の全小学校の三年生に鳥飼なすの植え付けを指導しているのも、この振興会です。
  • 北大阪農業協同組合(JA北大阪 集出荷、資材、営農指導、農作業の委託。摂津市を含む北摂地域の農業を支える協同組合です。WE米®JA北大阪との取り組みから生まれました。
  • 市の制度 市民農園生産緑地、防災協力農地の登録、多面的機能発揮促進事業、農業保険。摂津市の「農業の振興」ページに一覧があります。
  • 摂津市商工会 農業そのものの団体ではありませんが、「鳥飼なすワン」の主催者として、産地の野菜を市内の飲食店へつなぐ役目を担っています。

Getting started

摂津市で農業を始めたい方へ。 Three doors, from lightest to heaviest

「農業をやってみたい」と言われたとき、私たちは重さの違う三つの入口を案内しています。いきなり真ん中から入らなくていい、というのが実感です。

  1. 市民農園から始める

    いちばん軽い入口です。摂津市には市民農園があり、区画を借りて自分で野菜を育てられます。土に触れる回数を増やすところから始めたい方、家族で試したい方はここから。募集の時期と条件は市の案内をご確認ください。

  2. 研修生・援農として畑に入る

    私たちは農業学校の卒業生や、大阪府農政室の紹介で就農を学びたい方を、毎年二〜三名受け入れています。二十代から五十代まで、前職もばらばらです。栽培だけでなく、機械の扱い、出荷の段取り、売り先の見つけかたまで教えます。畑に立てることと、農業で食べていけることは別の技術だからです。受け入れの詳細はこちら

  3. 就農して、農地を借りる

    農地の貸借には農地法第3条の許可が要り、窓口は農業委員会です。ただ、手続きより先に立ちはだかるのは現実のほうで、ゼロから始めれば機械だけで二千万円近くかかります。だから最初は兼業から、と勧めることのほうが多いのが正直なところです。それでも来る人がいるなら、教えられることはすべて教えます。

制度の要件・募集時期は変わります。手続きの正確な情報は摂津市および摂津市農業委員会の案内をご確認ください。

Where to buy

摂津市産の農産物を買うEating what this city grows

摂津市で採れたものを摂津市で食べられる場所は、正直に言えばまだ多くありません。だから私たちは、育てることと同じくらい、売り場をつくることに時間を使っています。

オンラインでは、摂津の農家と食卓をつなぐ食材ECサイト「セッツマルシェ」から購入できます。市内の飲食店へは「お野菜配送便」で朝採りを直接お届けしています。鳥飼八町の畑のそばには直売所を準備中です。毎年夏には摂津市商工会が主催する「鳥飼なすワン」があり、市内の飲食店が一斉に鳥飼なすの一品を出します。

買える場所をもっと詳しく

FAQ

摂津市の農業について、よくある質問Frequently asked

摂津市の農地はどこにありますか。
まとまった農地は鳥飼地区、とくに鳥飼八町にあります。摂津市は市街化調整区域鳥飼八町と淀川に限って定めており、その面積は138ヘクタールです。市街化区域のなかにも、生産緑地の指定を受けた農地が住宅街のあいだに点在しています。
摂津市では何が作られていますか。
面積でいえば水稲が中心で、ヒノヒカリ、もち米、古代米などです。特産はなにわの伝統野菜鳥飼なす」で、原産地は摂津市鳥飼です。ほかにトマト、きゅうり、キャベツ、大根、玉ねぎ、さつまいも、クレソンなど季節の野菜が作られています。JA北大阪大阪公立大学の共同研究から生まれた機能性米「WE米®」も市内で栽培され、給食のパンに使われています。
摂津市産の農産物はどこで買えますか。
摂津の農家と食卓をつなぐ食材ECサイト「セッツマルシェ」から購入できます。市内の飲食店へは「お野菜配送便」で直接お届けしており、仕入れのご相談も承っています。鳥飼八町の畑のそばには直売所を準備中です。鳥飼なすの旬や買い方は鳥飼なすのページに詳しくまとめています。
摂津市で農業を始めるにはどうすればいいですか。
重さの違う三つの入口があります。市民農園を借りる、研修生や援農として畑に入る、就農して農地を借りる、の順です。農地の貸借には農地法第3条の許可が必要で、窓口は摂津市農業委員会です。当社では農業学校の卒業生や大阪府農政室の紹介で就農を学びたい方を毎年二〜三名受け入れています。
摂津市の農業は専業で成り立ちますか。
多くは兼業農家です。この地域で米だけを専業として成り立たせるには二十万平方メートルほどの田が必要で、市街化調整区域が138ヘクタールしかない市では現実的とはいえません。ゼロから始める場合、機械だけで二千万円近い初期投資がかかります。私たちは最初は兼業から始めることをお勧めしています。
畑を見学することはできますか。
できます。飲食店の仕入れ、農業研修、農福連携、収穫体験など、どの入口からでも構いません。ただし畑に出ていることが多いため、お越しの前にご連絡をお願いしています。連絡先は会社案内のページに記載しています。

出典・参考

Contact

摂津の畑を、見にきてください。

仕入れ、研修、農福連携見学。どの入口からでも構いません。