一面に育った稲。地平線に工場と送電鉄塔が並ぶ、大阪府摂津市の夏の田。

Agriculture in Osaka

大阪府の農業Farming in the most urban prefecture

日本でいちばん、都市に近い農業。 The smallest farmland, the closest customers

大阪府の農業を一言でいえば、「狭くて、近い」です。田の面積は全国で5番目に小さく、畑は3番目に小さい。それでも、この狭い農地は日本有数の消費地のただ中にあります。産地から食卓までの距離が、日本でもっとも短い場所のひとつ。それが大阪の農業です。

以下は、大阪府と農林水産省が公表している数字をもとに、大阪の農業のいまを整理したものです。書いているのは統計をまとめる立場ではなく、府内の畑で実際に米と野菜をつくっている法人です。数字のあとに、現場から見える景色も添えました。

執筆・更新:株式会社アグリズム摂津(大阪府摂津市鳥飼八町)。数字の出典はページ末尾に記載しています。

By the numbers

数字で見る大阪の農業Osaka agriculture at a glance

田の面積
8,640ha
全国で5番目に小さい/令和3年
畑の面積
3,760ha
全国で3番目に小さい/令和3年
総農家戸数
20,813戸
全国で8番目に少ない/令和2年
農業産出額
311億円
令和2年/生産農業所得統計
市街化区域内の農地
3,158ha
令和3年度末
うち生産緑地
1,841ha
令和3年度末
基幹的農業従事者
65歳以上が約74%
女性比率は約33%/令和2年
新規就農
57人
令和3年。平成23年は14人

産出額311億円の内訳は、野菜が45.3%、米が20.9%、果実が20.9%、花きが4.2%、畜産が6.1%。野菜と果実で三分の二を占めるのが大阪の特徴です。鮮度が求められ、輸送に時間をかけられないものほど、消費地の近くで作る意味があります。大阪の農業は、その一点に賭けているといってもいいくらいです。

いっぽうで、耕地面積は平成2年の18,080ヘクタールから令和3年には12,400ヘクタールへ、三十年で三割減りました。減ったぶんは住宅と道路と倉庫になっています。数字のうえで大阪の農業を語るなら、この二つ——近さという強みと、面積という制約——をいつも同時に見る必要があります。

Where Osaka leads

面積は小さくても、全国一位がある。 Crops where Osaka ranks in the national top ten

収穫量で全国トップ10に入る品目を並べると、大阪の農業の性格がはっきり出ます。日持ちのしない葉物と、手のかかる果樹です。

しゅんぎく
全国1位
3,250t(187ha)/令和2年
ふき
全国3位
833t(11ha)/令和2年
いちじく
全国3位
1,344t(40ha)/令和元年
くわい
全国3位
11t/令和2年
なばな
全国4位
353t(5ha)/令和2年
グリーンピース
全国5位
194t(34ha)/令和2年
みつば
全国7位
594t(27ha)/令和2年
こまつな・ぶどう
ともに全国8位
3,650t/3,890t

しゅんぎくが全国一位というのは、大阪の農業を象徴しています。鍋の季節に一斉に必要とされ、しおれやすく、遠くから運ぶには向かない。目の前に大消費地があるからこそ成立する品目です。果樹でぶどうといちじくが上位に来るのも、傷みやすいものほど近くで作ったほうがいい、という同じ理屈です。

Naniwa traditional vegetables

なにわの伝統野菜二十六品目。 Vegetables that carry the name of a place

大阪府には「なにわの伝統野菜」という認証制度があります。平成17年10月に始まった制度で、認証には三つの基準があります。昭和初期以前(おおむね100年前)から府内で栽培されてきたこと。苗や種子の来歴が明らかで、大阪独自の品目・品種・栽培方法によるもの、または府内特定地域の気候風土に育まれたもので、いまも種苗を確保できること。そして、現に府内で生産されていること。

令和8年5月に河内一寸空豆が加わり、認証品目は26品目になりました。毛馬胡瓜、田辺大根、天王寺蕪、勝間南瓜、難波葱、玉造黒門越瓜、守口大根、泉州黄玉葱、吹田慈姑、三島独活——名前の頭に、必ず土地の名前がついています。

そのうちのひとつが、鳥飼茄子鳥飼なすです。江戸時代から摂津市の鳥飼地区で栽培されてきた丸なすで、京都の賀茂なすに似ますが、やや下ぶくれで皮が柔らかく、果肉が緻密で独特の甘みがあります。私たちは、その原産地でこの野菜をつくっている生産者です。

鳥飼なすについて詳しく

ふたつ並んで実る鳥飼なす。

The hard part

いちばんの課題は、面積ではありません。 Who will still be farming in ten years

大阪の農業について語るとき、耕地面積の少なさが最初に挙げられます。けれど現場で切実なのは、面積よりも人です。府内の基幹的農業従事者は、60歳以上が約83%、65歳以上が約74%。総農家戸数は令和2年に20,813戸まで減りました。あと十年で、この数字がどう動くかは誰にでも想像がつきます。

農地は登記で残せますが、耕す人は登記では残りません。一度手が離れた畑は、そう簡単には戻らない。だから私たちは、作ることと同じくらい、人を迎えることに時間を使っています。

ただし、悪い数字ばかりではありません。大阪府内の新規就農者は、平成23年の14人から令和3年には57人へと増えています。企業の参入も同じ期間で5件から14件に。数としては小さくとも、向きは確かに変わっています。都市が近いということは、農業に触れる機会をつくりやすいということでもあります。

都市近郊農業の利点と課題を詳しく

Our corner of it

北摂・摂津市の場合One city, one line on the map

私たちの畑があるのは、大阪府北部の摂津市です。面積14.87平方キロメートルの小さな市で、市街化調整区域はわずか138ヘクタール。しかもその区域として指定されているのは、鳥飼八町と淀川だけです。

大阪市内から三十分。高架と倉庫の向こうに田畑がまとまって残り、そこがなにわの伝統野菜の原産地でもある。大阪の農業がどういうものかを一日で見たいなら、ここはかなり良い教材だと思っています。

摂津市の農業について詳しく

FAQ

大阪府の農業について、よくある質問Frequently asked

大阪府の農業にはどんな特徴がありますか。
耕地面積が全国最小級でありながら、大消費地のただ中にあることです。田は全国で5番目に小さく(8,640ヘクタール/令和3年)、畑は3番目に小さい(3,760ヘクタール)。産出額311億円のうち野菜が45.3%、果実が20.9%を占め、鮮度が求められる品目に偏っています。典型的な都市近郊農業です。
大阪府で全国上位の農産物は何ですか。
収穫量でしゅんぎくが全国1位(3,250トン/令和2年)です。ふき、いちじく、くわいが3位、なばなが4位、グリーンピースが5位、みつばが7位、こまつなとぶどうが8位に入っています。日持ちのしない葉物が上位に並ぶのは、消費地が近いからこそ成り立つ品目だからです。
なにわの伝統野菜とは何ですか。何品目ありますか。
大阪府が平成17年10月に始めた認証制度で、令和8年5月に河内一寸空豆が加わり26品目になりました。認証には、昭和初期以前(おおむね100年前)から府内で栽培されてきたこと、苗や種子の来歴が明らかで種苗が確保できること、現に府内で生産されていることの三つの基準があります。摂津市の鳥飼茄子鳥飼なす)もそのひとつです。
大阪府の農地はどのくらい減っていますか。
耕地面積は平成2年の18,080ヘクタールから令和3年の12,400ヘクタールへ、約三十年で三割減りました。市街化区域内の農地も昭和50年の13,277ヘクタールから令和3年度末の3,158ヘクタールまで減っています。減った土地の多くは住宅や道路、物流施設になりました。
大阪府で新規就農することはできますか。
できます。府内の新規就農者は平成23年の14人から令和3年には57人(44歳以下の青年34人、45歳以上の中高年23人)まで増えており、企業の参入も同期間に5件から14件に増えています。ただし農地の貸借には農地法第3条の許可が必要で、まとまった面積の確保は容易ではありません。当社では毎年二〜三名の研修生を受け入れています。
大阪府の農業の課題は何ですか。
担い手の高齢化です。基幹的農業従事者は60歳以上が約83%、65歳以上が約74%を占め、総農家戸数は令和2年に20,813戸まで減りました。耕地面積の減少もこれと連動しています。農地は制度で守れても、耕す人は制度では増えません。

出典・参考

Visit

大阪の畑を、実際に見にきてください。

大阪市内から三十分。研修も、仕入れも、見学も。